(憩いま専科) 門前茶屋

 実は、常連のお客様で自称小説家がいらっしゃいまして・・・。

 

 いつもこのカウンターのそちらのすみにお座りになります。お飲み物は、その時々の気分でご注文が変わるのですが、変わらないのはそのポーズでして・・・。

 あの文豪、夏目漱石先生のあの有名なポーズそのまま。顔かたちはそんなに似ていらっしゃいませんが、ひげはきちんと手入れが行き届き、なかなかダンディーな方です。

 

 そうそう、それでそのお客様の作品なんです。ちょっと開いてみませんか。

 

           門 前 茶 屋

第1話  16代目当主でございます

 「ようこそお参りでした。さ、さ、どうぞ。お茶と甘いものなどいかがでしょう。休んでいかれませ。」

 はじめまして、門前茶屋16代目当主 数奇風家 余餅(すきふや よへい)でございます。団塊の世代のしんがりで、気がつけば私もいい歳になりました。

 

 「はい3名様。どうぞ。どうぞ」

 

 いやいや、初めからこのように茶屋の主人に納まっていたわけではありません。人生も半世紀が過ぎてみれば、平凡は平凡なりにいろいろあるものでございます。さぁて、どのあたりからお話をさせていただきましょうか。

 

 「社長。電話ですよ。駅のショップから」

 「はい、お電話代わりました。毎度お世話になっております。・・・・・・。はい、かしこまりました。門前饅頭20箱。・・・・・・。大至急。はい、ありがとうございます」

 「社長、もう用意ができていますから、すぐに配達お願いしますね」

 

 それじゃ、続きは車の中で話しましょうか。

 いい景色でしょう。こののんびりとしたゆるい感じが私は好きなんですが・・・。

 そうそう、さっき店で電話を取り次いでくれたのが店長。妻の陣子です。店と言ってもご覧いただいたとおり、ちょっとした売店部分と飲食部分の席数が16席ほど。

 そんなに大きなお店ではありません。厨房も含めて25坪ほどでしょうか。それを私と店長とスタッフ2人で切り盛りしております。

 

 景色はののびりですが、商売のほうはなかなか厳しいんですよ。

 

第2話  現状維持は保身?

 店を継いでずいぶん経ちますが、経済的にはサラリーマン時代のほうが楽でしたね。もっとも、自由と点では比べものになりませんが・・・。

 

 こうして、ほとんど毎日配達に行くんですが、お客様というのはほんとうにありがたい。

 当たり前のことですが、うちの商売はこのあたりに観光に来てくれたお客様がすべてです。

 善笑寺と温泉と湖、そしてそこを訪れるお客様。そのおかげで小さな茶屋ですが、私で16代も続けてこられました。しかも商品といえばこの門前饅頭のみ、ほとんど奇跡に近いんじゃないでしょうか。

 

 でも、ずうっと考えてはいるんです。新商品を開発すべきじゃないのかと。

 5年ほど前に、ものすごく経営に行き詰った時期がありまして、。だけど運がいいのか、そのときに今から行く駅のショップから、うちのお饅頭を売らせてほしいという話が舞い込んできたんです。 おかげさまで、それで売上が増えたので、危機は去ってしまい、同時にのん気な私の頭の中から新商品のことも消えてしまいました。

 

 でも、やはりこのままというわけにはいきませんよね。「現状維持は保身であって、徐々に先細りする」なんていうことになるんじゃないかと。

 私かなり小心者なんです。

 

 そうだ。だいたいなんで門前茶屋を始めたのか。そのあたりからお話しましょうね。

 我が家に代々伝わる創業にまつわる話。もう伝説の世界でして、どこまでが本当なのかよくわかりません。口伝えで私まで来ましたから、これはもう壮大な伝言ゲーム状態です。

 

第3話  決戦 関が原

 初代余餅の話です。

 時代は戦国末期。あの有名な関が原の戦いです。

 

 初代余餅は元は武士でした。しかもかなり身分の高い。家中に人がいなかったのか、本当に実力だったのか、戦のときは軍師として活躍したそうです。

 仕えていたお館様の名前は、花藤勝成(かとうかつなり)小さな大名でしたが、家柄は由緒正しく、室町から続く名家でした。

 

 その花藤軍100名は勇んで関が原を目指しました。

 

 実は、店の前の善笑寺はもともと花藤家の菩提寺として建立されたものです。

 

 それで関が原・・・。

 前の晩に布陣はしたものの、いったい西に付いたものやら、東に付いたものやら。小大名の悲しさ、情報不足でさっぱり判断がつきません。しかしここはお家の一大事。確率は1/2ですが、負ける方に付けば一族郎党がその日から路頭に迷うことになるのです。

 

 お館様は18歳、初代は35歳。お館様は絵に描いたような名家の御曹司だったとか。初代に軍配を預けると、将棋に腰を下ろし微動だにしなかったそうです。

 しかしそうなると、ますます責任重大なのが初代余餅。

 

 あっ、そうそう。余餅という名前は後で付けたもので、このときはもっといかつい名前だったはずです。

 

第4話  ほどほどに良い加減に

 夜が明けて空が白んできましたが、いつまでたっても周りが見えない。そうです。あの日の朝の関が原はひどい霧でした。

 

 散発的に銃声が鳴り出しますが、5・6歩先も見えないのです。花藤家の陣営もじりじりしてきます。東西どちらとも決めかねているのに、銃声は鳴り始め、馬蹄の響きが大きくなっていく。しかし状況がさっぱり見えない。

 

 このとき不思議なことが起こります。

 初代の耳に、先年お亡くなりなった先代のお館様の声が聞こえます。

 「ほどほどに、良い加減に頼むぞ」。

 それは、先代のお館様の口癖でした。その時々でどのようにも解釈できるのですが、とにかく重大な局面になると決まってこの言葉を口になさったそうです。

 その声を聞いてから、初代はすっかり気が楽になり、同時に戦場の霧も晴れてきました。

 

 いよいよ決断のとき。

 ところがそのとき、突然、目の前に数人の鉄砲隊が現れ、「御免」というなり一斉射撃をしたのです。

 花藤軍は誰もが「もはや、これまで」と思いました。しかし、撃った弾ははるか山上を目指して飛んでいったのです。

 そうです。山上に陣取っていたのは小早川軍で、徳川方からの寝返りの催促の一斉射撃だったのです。

 

 しかしそんな状況分析などはあとの話。

 初代はすばやく軍を立て直すと、静まり返った山上に向けて一斉射撃を命じました。

 なぜそうしたのかはよくわかりませんが、かっこよく言えば、戦場における武士の直感でしょうか。

 

 とにかくこの瞬間に東軍の勝利は決まり、同時に花藤家の未来は約束されました。

 花藤家は所領を安堵され、故郷には戦のない平和な日々が戻ってきました。

 

第5話  悩める日々

 はからずも歴史を変える役割を果たしてしまうとはどんな感じでしょうね。

 

 関が原から凱旋した花藤軍は意気揚々。

 お館様はとにかく大喜びでした。早速、城では論功行賞が行われ、初代は重役に大抜擢。大出世でした。

 

 平穏な日々が続き、初代はしばらくのんびりと暮らしていたのですが、そのような毎日に疑問を持ち始めた。持たなきゃいいのに持っちゃった。

 

 このまま戦がなくなればいいことだが、そうしたら自分の存在意義はどうなるのだろうか。

 今までの度重なる戦でずいぶん仲間が死んでいった。軍師という立場上采配をふるったが、負け戦はないものの、誤って死なせてしまった命もあった。

 戦がなくなれば、必要なのは民政に長じた者たちのはず、馬上野を駆け回ってきた自分に事務は向かなかろう。なんてことを思うようになりました。

 

 来る日も来る日も考えあぐねた結果、ついにお館様に気持ちを打ち明けました。お役御免を申し出たわけです。思い切ったことをしたものです。

 

 お館様も困りました。

 なんてたって関が原最高の功労者、花藤家の運命を決めた男ですから、「あ、そうか。長い間ご苦労であった」なんて、簡単に暇を出すわけにもいかない。

 家中でそそっかしいのが、ご重役御謀反なんてことを言い出したら、国中が大騒ぎになっちゃう。

 

 それでとにかく「その話、しばらく考えさせてくれ」ということになりまして、月日は流れました。  

 

第6話  初代余餅、京へ

 お館様にも悩みはあったでしょうね。

 

 確かに戦がなくなれば、勇猛果敢な部下より、行政に明るい部下が必要になってきます。しかし、命を張って国をこれまで守ってくれた部下の処遇もきちっとしてやらねばならないわけで・・・。

 

 そしてついに名案が生まれます。初代は城に呼ばれました。

 

 「寺を建立しようと思う。それほど大きな寺は造れぬが、花藤家先祖代々の菩提をともらい、併せて戦で命を失った者たちの冥福も祈ろうと思うが、いかがじゃ」

 「お館様。それは良いことと存じます」

 「そうか。そうであろう。そちの気持ちを聞いて安堵した。では一切をそちに任す」

 「はっ?しかし、私には寺のことなどさっぱり・・・」

 「まぁ、よいわ。京へ上っていろいろ視てまいれ」

 

 もちろん国の中に寺がないわけではありませんが、お館様としてはいろいろ考えた末に、新しい時代の新しい寺を建立し、平和な国づくりの一助としたかったのでしょうね。

 

 とにかくそんなわけで、部下数人を引き連れて初代は京へ上りました。

 

 なにしろバリバリの田舎侍ですから京では驚きの連続で、頭の中は今で言うカルチャーショックの嵐に見舞われます。見るもの聞くものすべてが美しくしかも洗練されている。

 このカルチャーショックをいかにして寺造りに反映させるか。毎日足を棒にして京の町を歩き回りました。

 

 そしてそんなある日、あるお寺の門前で不思議なことに出会います。

 

 

第7話  なにもないのじゃ

 もうそこが駅です。

 門前饅頭を届けてきますから、ちょっと待っててくださいね。

 

 「おはようございます。数寄風家でございます。いつもありがとうございます。」

 「あっ、数寄風家さん、待ってたよ。お客様が、お宅のお饅頭じゃなきゃどうしてもだめだって。・・・・・・・・お客様ぁ、門前饅頭、到着しましたよぁ」。

 

 お客様というのはほんとうにありがたいです。とにかく、一箱一箱買っていただいたおかげで、私たちが今日もこうしていられるわけで。

 

 それで、京へ上った初代でしたね。・・・・・・・・・

 その日も朝から、京の町を何を探すともなく歩き回り、あるお寺の門前にあった茶屋で腰を下ろしました。

 お茶をすすりながらぼうっとしていますと、山門からお坊様がすうっと現れ、人懐っこい笑みを浮かべると、「わしも茶をいただこう」と言って初代の隣りに腰掛けました。

 

 そしてそのお坊様は「よう参られた。待っておったぞ」と、初代が何も言わないうちに、すべてを知っているかのように、いや、すべてお見通しで語り始めました。

 故郷のこと。お館様のこと。戦のこと。などなど、そして初代が悩んでいることもすべて知っているのでした。

 

 「もともと何もないのじゃよ。目に見えるもの耳に聞こえるものはすべて幻、心に起こることもまた幻。何もない。何もない」。

 「それでは、人とはいったい何なのでございましょう」 

 

第8話  夢?

 「おう、そのことよ。わしもそのことが知りたくて御仏に仕えたが、いまだにようわからん。じゃが、ひとつだけわかったことがある」

 「ひとつだけ?」

 「おう、ひとつだけじゃ。それはこの世に生き物はたくさんおるが、笑うのはわしら人間だけということじゃ」

 

 「そういえば、狸や狐の笑い声を聞いたことはございませぬなぁ」

 「わっはっはっはっはぁ」

 「もうしお坊様。お名前をお聞かせくださいませぬか」

 「善笑坊。そうだ、これはわしが修行と思うて彫ったものじゃが、もろうてくれぬか」

 「これは、これは結構な物を。ありがとうございます。ありがとうございます」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 「お侍様。お侍様。起きてくださいまし。道行く人たちに笑われておりますぞ」

 「むっ。あっ。すまん。すまん。うっかり眠ってしまったようじゃな」

 「よい夢でもみていたのでございましょう。笑ったり、お礼を言ったり、たいそう楽しそうにしておりましたよ」

 

 「夢か・・・・・・。おやじ、勘定は?」

 と言って、懐に手を入れてびっくり仰天。夢の中でもらった観音像がそこにあったのです。

 初代は勘定を済ますと、観音像を握り締めて山門からお寺に飛び込みました。

 

 しかし、やはりお寺の誰に聞いても、「善笑坊」などというお坊様は知らないと言うのです。

 

第9話  あの頃は

 ここを左に行くと店の方角ですが、今日は少し遠回りをしましょう。

 といってもあまり油を売っていると店長に叱られますけど、「饅頭屋が油を売っていてどうするんですか。お饅頭を売ってください」ってね。

 

 あっ、音楽かけてもいいですか? 1日1回はこれを聞かないとどうも調子が出ません。

 This is It,ですよ。マイケル・ジャクソン。ボリュームはこれくらいでも大丈夫ですか? うるさかったら言ってください。

 

 そう言えばこの間、お客様でね。20代後半のOL風の人だったんですけど。

 ヘッドホーンステレオを聞きながら店に入ってきて、注文するときだけ耳からヘッドホーンをはずして、あとはずーっと、チャカチャカチャカチャカ。私も若い頃は愛用しましたけど・・・。

 

 そうしたら、そのとき隣のテーブルにいた初老のご婦人のお客様が言ったんです。

 「今日はいい声で風が歌っていますよ」。

 OL風のお客様は、ご婦人が何を言ったかわかりません。

 でも、なにか雰囲気を感じたのでしょうね。ヘッドホーンをはずして、ご婦人と話し始めました。

 

 「私もあなたくらいのときはバリバリ働いたわ。キャリア・ウーマンのはしりだった。女性誌の特集記事で紹介されたこともあったのよ。写真入りでね」

 「・・・・・・」

 「でも、今思うとね」。

 

第10話  ほほえみ観音

「もう少し肩の力を抜いてもよかったな。あの時は無我夢中だったから・・・・。

だけど、きっとその方がもっといい仕事ができたような気がする。

それに、がむしゃら過ぎて回りを傷つけたかも、そして自分もね」

「・・・・・・」


「あなたお寺はお参りしたの?」

「いえ・・・」


「それじゃ、ゆっくり観て回るといいわ。風の声、木の声、花の声。

それと私はあの観音様が好き。とてもいいお顔で笑ってるのよ。

じーっと見ていると、なんだか身体中がほんわかしてきてね。

いつの間にかこちらまで笑えてきちゃうの、不思議よ」


「あのー、ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ。自分勝手な話でごめんなさいね」


 OL風のお嬢さんは、ヘッドホーンをバッグにしまって山門をくぐっていき、ご婦人の方は温泉宿でお友達たちと待ち合わせだとかで、「今日は久しぶりに飲もうかしら」なんて楽しそうにバス停に戻っていかれました。


 そうなんです。

 初代の話に戻りますが、不思議な事が起きて観音像を手に入れましたが、その観音様のお顔がまた不思議。

 笑っているんです。明らかに。

 そりゃー、大福様みたいに豪快に笑っているわけじゃありませんよ。あくまでも上品に、そして慈悲深く。

 

 京から帰った初代は寺づくりに没頭します。

 キーワードは「和み」。

 大まかな図面を作成し、お館様から「楽しみにしておるぞ」とOKが出ました。

 

 さぁ、いよいよ場所探しです。


第11話  お役ごめんのはずが・・・

 国中を歩き回り、お寺を建てるのによい場所を物色しました。

 初代の頭の中にはあるイメージが強烈にあったんです。それは、あの京での不思議な体験をしたお寺とその門前。

 

 あの時びっくり仰天してお寺に駆け入り、善笑坊を探しましたがそんなお坊様は誰も知らず、いったいなんだったのだろうと、本堂の前で観音様を片手にぼうっとしていました。


 しかし我に返ってみれば、そのお庭の清々しいこと。心が洗われるようです。

 さらに本堂の中に目を凝らしてみれば、ご本尊の観音様のお顔のなんと優しいこと。言葉ではうまく言い表せませんが、「そうだ。これだ」とそのとき思ったのです。

 

 お館様もこの話と観音様を大いに喜ばれ、「これは吉兆じゃ。これで国の安泰は間違いないの」と、初代はお役ご免のはずがますます株が上がってしまいました。

 

 初代余餅は、あの時善笑坊が言った「この世で笑うのは人だけ」ということばがひじょうに心に残っており、これからの平和な日々を国中の人々が楽しく生きていく手伝いを、この寺造りでしようと思っていました。

 

 春には花を愛で、夏には木陰で涼を取り、秋には豊作を喜び、そして冬は雪の中でものを想う。

 

 低い山ですが街道が山に差し掛かったあたり、そこから少し下がったところには街道と平行に川が流れています。

 そこに長かった戦乱ですっかり荒れ果ててしまったお寺がありました。


第12話 いやー、めでたし。

 初代はそこに目をつけました。

 なんとなく京のあのお寺の立地に似ていたのです。しかもお城からも適当な距離でした。

 と、まぁそんなわけでできたのが、私たちがその後ずうっとお世話になっている善笑寺でございます。

 

 初代は、そのお寺で企画運営部長のようなことをやっていたんでしょうね。

 今で言うテーマパークのようなものにしたかったんじゃないでしょうか。身分を問わず、訪れた人たちがそのときの季節を楽しめるように・・・。

 

 ご本尊はもちろんあの観音様。

 お寺の名は、観音様をくれた幻のお坊様「善笑坊」から。

 いやーめでたし。めでたし。

 おっといけない。油を売りすぎました。帰りましょう。帰りましょう。

 

 「社長。今日は何の日ですか?」

 「火曜日です。・・・月初の火曜日は営業会議。忘れてました。すんません」

 

 そうなんです。火曜日は比較的お客様が少ないので、月初はみんなで昼食をとりながら先月の反省と今後の方針を話し合う、営業会議の日なのです。

 歳のせいではなく、昔から肝心なことほど忘れる悪い癖がありまして・・・。

 

 「遅れて申し訳ありませんでした。それでは営業会議を始めます。あれ、今日の昼飯おしゃれだね。これお寺に出入りしている初梅屋さんの松花堂じゃないの」

 「先月の営業成績がよかったので、ちょっと奮発してみました」と店長。

 「さすが太っ腹店長」と、いつも余計な言い回しをしてしまうスタッフの美代さん。ちなみに、店長で私の妻陣子はポッチャリ系です。

 「これ食べてみたかったんです。うれしい」と、素直に表現できるスタッフの茂子さん。

 「それではみなさん。まずは楽しくおいしくいただきましょう。いっただっきまぁす」。

 

第13話 営業会議

 昼食もおいしくいただき、さて、営業会議。

 

 私たちとしては、わざわざお越しいただいたお客様に、さらに「ほんとうに来てよかった」と思っていただきたいわけですが、そこで何かよい工夫はないでしょうか。ということをみんなで考えてみました。

 

 「おいしいお饅頭とお茶。それと笑顔の接客。あとはなにかしらね」と店長。

「お饅頭を3個食べたお客様には、もう1個サービス」と美代さん。

「ここへ来るお客様っていろいろですよね」と茂子さん。

 

そうなんです。ほんとうに老若男女さまざまでして、ひとりでみえたりグループだったり、もちろんカップルも・・・。

 

「そうよね。ぼうっとしてたり、変にニコニコしてたり、暗かったり、いろいろだわね」

「それじゃ、お饅頭にいろいろな顔を描く」

「お客様はきっと何かお願いがあってここへ来るんじゃないでしょうか」

「そうか。私たちも観音様にお願いするものね。それで確かにご利益があるし」

「わかった。新製品、観音饅頭を作る」

「ですからここで、なんだかほんとうに願いが叶うような気持ちになれたら」

 

人には多かれ少なかれ心を悩ますものがあるものです。

うれしくても楽しくてもどこかに心配の種は残るもの。ましてや苦しかったり、悲しかったりすればなおのことです

 

そして厄介なのは、心の中が自分でもよく見えないことです。でも、うれしさや楽しさは誰かが一緒にいてくれたら倍増しますし、苦しみや悲しみは半減します。

さてさて、どんなふうに決まりますことやら…。

 

つづく

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